北海道にはどんな種類のマダニがいるの?
北海道ではどんなマダニの感染被害があるの?
北海道に行くのは初めて!マダニの対策法を教えて
こういった悩みにお答えします。
日本でもっとも広大な自然を誇る北海道には、2種類の危険なマダニがいます。
北海道はさまざまな観光スポットやアクティビティなどがあり、旅行者に人気の観光地ですよね。
もし北海道で野外アクティビティをするなら、マダニに気をつけてください!
なぜなら、北海道ではマダニの感染被害が多く報告されているからです。
この記事では、北海道におけるマダニの種類や感染被害、対策法をご紹介します。
楽しい北海道旅行にするために、まずはマダニの情報を知っておきましょう。
マダニの被害にあったら、せっかくの北海道旅行が台無しだわ。
こちらの記事でも、マダニの生態や感染症のことが詳しく載っています。
参考にしてください。
北海道の危険なマダニは主に2種類
- 【北海道の危険なマダニ①】シュルツェマダニ
- 【北海道の危険なマダニ②】ヤマトマダニ
北海道で人を吸血する危険なマダニは、主にシュルツェマダニとヤマトマダニの2種類です。
2種とも北海道をはじめ日本に広く分布しており、また、感染症を媒介しています。
見た目がよく似ている2種ですが、生息地や媒介する感染症にはわずかに違いが見られます。
どんな場所に生息し、どんな感染症を媒介するのか、ご紹介します。
【北海道の危険なマダニ①】シュルツェマダニ
シュルツェマダニの特徴 | |
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分類 | ダニ目・マダニ科・マダニ属 |
大きさ | 約2.5~3.2mm(未吸血時) |
分布 | 北海道から東北地方、中部地方の山岳地帯 日本以外では、東ヨーロッパ・ロシア・中国など |
主な感染症 | エゾウイルス感染症、ダニ媒介性脳炎、ライム病など |
画像 | 画像引用元:NIID国立感染症研究所 |
シュルツェマダニは、日本国内で広く分布していますが、北方に多いマダニです。
とくに北海道から東北地方、また、中部地方の寒冷な山岳地帯に見られます。
北海道内では平地でも見られますが、渡島(おしま)地方や檜山(ひやま)地方などの南部の低地で確認できることはめったにありません。
シュルツェマダニの主な感染症は、エゾウイルス感染症やダニ媒介性脳炎、ライム病などがあります。
中でもエゾウイルス感染症は、近年北海道で発見されたばかりの新しい感染症です。
それぞれの感染症については、後で詳しく説明します。
【北海道の危険なマダニ②】ヤマトマダニ
ヤマトマダニの特徴 | |
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分類 | ダニ目・マダニ科・マダニ属 |
大きさ | 約2.0~3.0mm(未吸血時) |
分布 | 北海道から鹿児島まで 日本以外では、東南アジアや台湾、韓国、中国 |
主な感染症 | ダニ媒介性脳炎、日本紅斑熱(にほんこうはんねつ)など |
画像 | 画像引用元:NIID国立感染症研究所 |
ヤマトマダニは、シュルツェマダニとは逆に、日本の南方に多いマダニです。
北海道内でも広範囲に分布していますが、利尻島(りしりとう)・礼文島(れぶんとう)・天売島(てうりとう)・焼尻島(やくしりとう)の高山などの寒冷地には分布していません。
ヤマトマダニの主な感染症として、ダニ媒介性脳炎や日本紅斑熱(にほんこうはんねつ)などがあります。
ダニ媒介性脳炎は、感染被害が5例報告されており、すべて北海道のみの確認です。
日本紅斑熱は、主に西日本での感染が多く、北海道では確認されていません。
シュルツェマダニは北に、ヤマトマダニは南に多いんだね。
北海道でのマダニの感染被害4つ
- 【エゾウイルス】北海道で発見された新ウイルス!
- 【ダニ媒介脳炎】国内の5症例は北海道だけ!
- 【ライム病】全国でもっとも北海道に症例が多い!
- 【回帰熱】国内の2症例は北海道だけ!
北海道でのマダニの感染被害は、主に4つあります。
「エゾウイルス」「ダニ媒介脳炎」「ライム病」「回帰熱」などです。
とくにエゾウイルスは、近年発見された新しい感染症として注目されています。
どんなマダニが媒介しているのか、感染するとどんな症状が出るのかご紹介します。
また、北海道のみに報告された感染症や北海道に多い感染症など、北海道特有の感染症も見ていきましょう。
【エゾウイルス】北海道で発見された新ウイルス!
エゾウイルスについて | |
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潜伏期間 | 数日〜2週間程度 |
主な症状 | 発熱、血小板減少、白血球減少、肝機能の異常など |
病原体 | ウイルス(ブニヤウイルス目ナイロウイルス科) |
主な媒介マダニ | オオトゲチマダニ、ヤマトマダニ、シュルツェマダニなど |
主な保有動物 | エゾシカやアライグマなどの野生動物 |
治療薬 | 明確な治療法やワクチンはない |
エゾウイルスは、近年新たに発見された感染症です。
主な媒介マダニは、ヤマトマダニ、シュルツェマダニ、オオトゲチマダニなど。
ウイルスを保有しているのは、エゾシカやアライグマなどの野生動物で、マダニが媒介しています。
エゾウイルスは、2019年に北海道ではじめて検出されたウイルスです。
第一感染者が出たあとの調査結果では、2014年から2020年までの7年間で少なくとも7名が感染していたことが明らかになりました。
主な症状は、発熱・血小板減少・白血球減少などがあります。
エゾウイルスの症状は、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とよく似ていますが、北海道ではSFTSの感染報告は現在ありません。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の症状
発熱、消化器症状、神経症状、リンパ節腫脹、出血症状の他、白血球減少、血小板減少などが見られる。
また、エゾウイルス感染症に死亡例はなく、患者の7名のうち4名には、回復後エゾウイルスに対する抗体ができていたことが分かりました。
現在、治療薬や予防ワクチンなどはまだ確立されていませんので、マダニに咬まれないことが重要です。
服装に気をつけ、虫除けグッズを備えるなどしっかり予防しましょう。
新しいウイルス!?マダニの感染症がまた増えちゃった!
【ダニ媒介脳炎】国内の5症例は北海道だけ!
ダニ媒介脳炎について | |
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潜伏期間 | 7~14日程度 |
主な症状 | 発熱、頭痛、筋肉痛、けいれん、めまい、マヒ、髄膜炎(ずいまくえん)、脳炎(のうえん) |
病原体 | ウイルス(フラビウイルス科フラビウイルス属) |
主な媒介マダニ | ヤマトマダニ、シュルツェマダニなど |
主な保有動物 | げっ歯類、小型鳥類 |
治療薬 | 治療薬はなく、対症療法 不活化ワクチンがある |
ダニ媒介脳炎の主な媒介マダニは、ヤマトマダニやシュルツェマダニなどです。
ウイルスを保有している主な動物は、アカネズミやエゾヤチネズミなどのげっ歯類、または小型鳥類など。
ダニ媒介脳炎は、1993年に日本国内ではじめて感染患者の報告があり、2018年6月までに5症例の報告があります。
この5症例は、いずれも北海道内のみでの発症です。
2例目(2016年8月)と3例目(2017年7月)の患者は、発症後に死亡の報告がありました。
主な症状は、発熱・頭痛・筋肉痛・けいれん・めまい・マヒ・髄膜炎(ずいまくえん)・脳炎(のうえん)と多くあります。
致死率は、ヨーロッパ亜型(※)で1~2%、シベリア亜型で6~8%、極東亜型で20%以上にもなり、非常に危険です。
(※)亜型(あがた)とは、派生的な型のこと。サブタイプ。
ワクチンがありますが、治療薬は現在無く、対処療法になります。
対処療法とは
病気の原因に対する治療ではなく、発症した症状に対して緩和するための治療。
北海道で野外アクティビティをする前に、ワクチン接種で予防しておくのも手ですよ。
治療薬がないのはとても不安。ワクチン予防が重要なカギですね。
【ライム病】全国でもっとも北海道に症例が多い!
ライム病について | |
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潜伏期間 | 12~15日程度 |
主な症状 | 【感染初期】限局性の遊走性紅斑(ゆうそうせいこうはん)、筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒、全身倦怠感(けんたいかん)など 【播種期(はしゅき)】皮膚症状、神経症状、心疾患、眼症状、関節炎、筋肉炎など 【慢性期】慢性萎縮性肢端皮膚炎(まんせいいしゅくせいしたんひふえん)、慢性関節炎、慢性脳脊髄炎(まんせいのうせきずいえん) |
病原体 | 細菌(ライム病ボレリア) |
主な媒介マダニ | シュルツェマダニ |
主な保菌動物 | げっ歯類、鳥類 |
治療薬 | ドキシサイクリンやテトラサイクリンなどの抗菌薬 ワクチンはない |
ライム病の主な媒介マダニは、シュルツェマダニです。
病原体のボレリアを保菌しているのは、野ネズミなどのげっ歯類や鳥類などで、マダニが媒介します。
ライム病は、1999年から2018年までの20年間で231症例の感染報告があり、中でも北海道での感染がもっとも多いです。
北海道以外の地域では、北海道や海外に行った際に感染したという報告例が多くあります。
下の画像は、2013年~2018年の都道府県別ライム病届出数のグラフです。
グラフを見ると、北海道はライム病の感染者数が圧倒的だということが分かりますね。
ライム病の主な症状は、感染初期・播種期(はしゅき)・慢性期の3ステージに分かれています。
「感染初期」は発熱や頭痛、筋肉痛などにはじまり、皮膚症状や神経症状などの「播種期」に入ります。
最終的に「慢性期」の皮膚炎や関節炎、脳脊髄炎(のうせきずいえん)などにうつりますが、日本では慢性期の症状の患者は今のところ見られていません。
抗菌薬による治療が有効ですが、予防のためのワクチンは現在ありませんので対策が必要です。
野外へ行くときは、マダニに咬まれないよう服装や虫除けグッズなどの準備を万全にしましょう。
ライム病は後遺症のリスクもあるから怖いわね。
【回帰熱】国内の2症例は北海道だけ!
回帰熱について | |
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潜伏期間 | 7~10日程度 |
主な症状 | 発熱期と無熱期を3~5回繰り返す 【発熱期】発熱(39度以上)、筋肉痛、関節痛、倦怠感など 【無熱期】発汗、全身倦怠感、低血圧、斑状丘疹(※)など (※)斑状丘疹(はんじょうきゅうしん)とは、皮膚がプツプツ状に盛り上がった発疹の一種のこと。 |
病原体 | 細菌(ボレリア・ミヤモトイ) |
主な媒介マダニ | シュルツェマダニ、ヒメダニなどのオルニソドロス属ダニ、シラミ |
主な保菌動物 | げっ歯類、鳥類 |
治療薬 | テトラサイクリンやエリスロマイシンなどの抗菌薬。ワクチンはない。 |
回帰熱は、マダニやダニの他にシラミからの感染もある感染症です。
病原体のボレリアは主にげっ歯類や鳥類が保菌し、マダニやダニ、シラミが媒介します。
回帰熱は、2010年と2012年に輸入症例がありましたが、国内感染では2症例あり、どちらも北海道で確認されました。
2症例の感染患者は、当時ライム病と診断されていましたが、のちの調査で回帰熱の病原体(ボレリア・ミヤモトイ)が検出されたとNIID国立感染症研究所が報告しています。
国立感染症研究所では、過去にライム病が疑われた患者血清約800検体を用いた後ろ向き疫学調査を実施し、このうち発症後の有熱期に採血された2検体からB. miyamotoi DNAを検出した。
NIID国立感染症研究所より引用
回帰熱の症状は、筋肉痛や関節痛を伴う「発熱期」と、熱はなく発汗や倦怠感などが見られる「無熱期」を3~5回繰り返します。
回帰熱とライム病は、病原体が同じボレリア菌です。
そのため識別診断が難しく、2症例はライム病と回帰熱を同時に感染した可能性もあるとしています。
また、マダニが回帰熱とライム病の病原体を2つとも持っていた場合も考えられます。
回帰熱の治療は、抗菌薬が有効です。
ダニ媒介性回帰熱にはテトラサイクリンを、シラミ媒介性回帰熱にはテトラサイクリンとエリスロマイシンの併用、もしくはドキシサイクリンを投与します。
予防のためのワクチンはありませんので、ライム病と同じくマダニ対策をしましょう。
回帰熱とライム病の症状の違いをしっかりと覚えておきましょう。
医師も的確な診断ができます。
楽しい旅行のためのマダニ対策法
- 【予防法】北海道でマダニに咬まれないために
- 【対処法】北海道でマダニに咬まれたときは
北海道におけるマダニの種類や感染症を紹介しました。
感染症は、一度かかると後遺症や死亡の可能性もある恐ろしい病気です。
そのため、マダニに咬まれないためには予防をする必要がありますよね。
次は、マダニに咬まれないための予防法と咬まれたときの対処法をご紹介します。
【予防法】北海道でマダニに咬まれないために
- 肌を露出しないような服装にする。
- DEET(ディート)成分を含む虫除け剤を服の上からかける。
- 家に入る前にマダニがついていないか確認する。
- 家に帰ったら入浴し、マダニに咬まれていないか全身を確認する。
マダニに咬まれないためには、上記のような対策をしましょう。
また、北海道の各市では、マダニの注意喚起や予防法を案内しています。
次の動画は、札幌市が案内しているマダニ予防法です。
はじめて北海道を旅行する人は、動画を見て正しい予防法を理解し、マダニの感染リスクを抑えましょう。
【対処法】北海道でマダニに咬まれたときは
実際マダニに咬まれてしまったときは、無理に抜こうとしないでください。
むりやり抜くと、マダニの体液が逆流したり、マダニの口器(こうき)が皮膚内に残って化膿や感染リスクを起こす可能性があります。
マダニに咬まれたときは、医療機関で対処してもらうのが一番安心です。
また、マダニを取るための除去グッズ「ティックツイスター」があります。
使い方は以下の動画で詳しく載っていますが、はじめてで不安な人は医師に取ってもらいましょう。
まとめ*北海道へはマダニ対策を
以上、北海道のマダニの種類や感染症の種類、マダニの対策法をご紹介しました。
北海道でとくに危険視すべきマダニは、シュルツェマダニ。
シュルツェマダニは、紹介したすべての感染症を媒介しているので要注意のマダニですね。
また、新種のウイルスも発見され、北海道ではマダニ対策が重要だということがよく分かりました。
北海道各市が案内しているマダニ予防法・対処法を理解し、楽しい北海道旅行にしましょう。
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