マダニって名前は聞いたことあるけど、どんなダニなの?
マダニについて知りたいけど、ダニの画像を見るちょっと抵抗があるわ。
このような悩みにお答えします。
マダニとは、8本の足がある、クモ科の生き物です。
昆虫ではありません。
ダニと言えば、布団にいる「ヒョウヒダニ」や人を刺す「ツメダニ」など、目に見えない生き物のイメージが強いですよね。
マダニの通常サイズは3mm程度で、人の目でも十分に見える大きさです。
さらに、マダニは人や動物を刺し、吸血します。
吸血後は、通常サイズの2~4倍サイズに、ふくれ上がります。
吸血後のマダニを見つけると、「ゾッ」としてしまいそうですね。
マダニは、近年感染症を媒介(ばいかい)するダニとして、ニュースで取り上げられることも増えてきました。
今回はマダニとはどんなダニなのか、マダニの生態や生息場所、刺された時の対処法などを紹介します。
マダニに刺されても、自分ではがしてはダメだよ!
マダニの口が皮膚に残ってしまい、化膿(かのう)する可能性があります。
後ほど詳しく説明します。
この記事にはマダニの画像は掲載されていません。
虫が苦手な方でも、安心して読んでいただけます。
マダニとはどんなダニ?生態・サイズ・特徴など徹底解説
マダニの生態や特徴などを紹介します。
マダニとはどんなダニ?
- クモ綱ダニ目マダニ亜目に属するダニの総称
- 現在世界で確認されているマダニの種類は全部で900種類
- 日本で確認されているのは46種類
マダニは布団に寄生するヒョウヒダニや、ヒトを刺すツメダニなどとは違い、目で見て確認することができます。
サイズはマダニの種類によって違いますが、吸血前の大きさが2~7㎜程度のものが多いです。
足が8本あり、クモのような形をしています。
世界で確認されているマダニは900種類以上です。
そのうち日本で確認されているのは、46種類。
布団にいるヒョウヒダニやツメダニ、食品にいるコナダニと違って、目視できるサイズなのね。
実際にマダニに吸血されているところを、見つける人もいるよ。
マダニの成長サイクル
多くのマダニが、幼虫、若虫(わかむし)、成虫の各段階で、哺乳類(ほにゅうるい)から吸血を行います。
- 卵から孵化(ふか)
- 幼虫になり、哺乳類から吸血
- 脱皮し若虫になり、哺乳類から吸血
- 脱皮し成虫になり、哺乳類から吸血・交尾
- 卵を産み、メスは産後死滅
マダニは1~5のサイクルを繰り返します。
一生の中で吸血する期間は、20~25日程度です。
マダニは数年、吸血しない飢餓(きが)状態でも生き続けることができます。
何年も吸血できない期間が続くと、そのまま死滅。
多くのマダニが春から秋にかけて活動しますが、環境によっては冬も活動しています。
日本で特に多くみられるマダニは3種類!
- フタトゲチマダニ
- キチマダニ
- ヤマトマダニ
ここでは、日本で特に多くみられるマダニの特徴を、それぞれ詳しく紹介します。
全国どこにでもいる「フタトゲチマダニ」
フタトゲチマダニ | |
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サイズ(吸血前) | 3~4㎜ |
サイズ(吸血後) | 10㎜ |
分布地 | ロシア、オーストラリア、東南アジア、ニュージーランド |
日本は北は北海道、南は沖縄県 | |
活動期 | 5~10月 |
寄生する動物 | 牛、二ホン鹿、人、犬、鳥類など |
媒介する主な感染症 | 日本紅斑熱、Q熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS) |
日本のどこにでもいるのが「フタトゲチマダニ」です。
実際にフタトゲチマダニに刺されたという報告は、多くされています。
フタトゲチマダニの吸血前は、3~4㎜程度の大きさです。
吸血すると10㎜程度の大きさになります。
フタトゲチマダニの吸血中は、あまり痛みを感じないようです。
吸血されて丸く膨れ上がったところで、気がつく人もいますが、多くの人は、2~3日後に、かゆみや熱感など体の変化で気がつきます。
マダニに吸血されても、1週間以上気づかない人もいるみたいだよ。
フタトゲチマダニは、草などしげみにかくれ、動物の体温、振動、二酸化炭素を感じると、飛びつき吸血します。
寄生する動物は、牛や犬、人、鳥類などさまざまです。
また、フタトゲチマダニ1匹のメスから生まれる卵は、2000~3000個と言われています。
1年中活動する「キチマダニ」
ヤマトマダニ | |
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サイズ(吸血前) | 3㎜ |
サイズ(吸血後) | 8㎜ |
分布地 | 日本は北は北海道、南は沖縄県 |
活動期 | ほぼ1年中活動 |
寄生する動物 | 鳥類、哺乳類 |
媒介する主な感染症 | 日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS) |
ほぼ1年中活動しているのが「キチマダニ」。
日本では全国どこにでもいるマダニです。
吸血前は3㎜で、背中が黄色の色をしています。
キチマダニは哺乳類や鳥類に吸血するダニです。
一般的には、野ウサギに寄生し、野兎病(のうさぎびょう)を感染させると言われています。
人が刺されることはきわめてまれですが、日本紅斑熱(にほんこうはんねつ)や重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を感染させたとする報告例もあります。
アジアを中心に生息する「ヤマトマダニ」
ヤマトマダニ | |
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サイズ(吸血前) | 2~3㎜ |
サイズ(吸血後) | 8㎜ |
分布地 | 東南アジア、台湾、韓国、中国 |
日本は北は北海道、南は鹿児島県 | |
活動期 | 4~8月 |
寄生する動物 | 小型の哺乳類(幼虫ダニ、若虫ダニ)、大型の哺乳類(成虫ダニ) |
媒介する主な感染症 | ライム病、日本紅斑熱 |
アジアを中心に生息しているのが「ヤマトマダニ」です。
日本では、北海道から鹿児島県まで分布しており、屋久島以南では確認されていません。
ヤマトマダニは吸血前と吸血後で、3~4倍近く大きさが変わります。
幼虫や若虫と、成虫では、寄生する動物が異なります。
幼虫や若虫は、小型の哺乳類に寄生するのが一般的です。
野ネズミなどに寄生するため、家屋に持ち込まれる可能性もあります。
成虫になると、大型の哺乳類に寄生するため、人や犬などにも寄生するので注意しましょう。
ここに取り上げたマダニは、ほんの一部にしかすぎませんよ。
マダニは私たちの身近にいる!
- 野山
- 畑
- 公園
- 家の庭
- 河川敷
マダニは私たちが生活している身近にひそんでいます。
最も身近な場所で言えば、子供たちが遊ぶ公園やお家の庭です。
野山や畑など、草が生い茂るところに多いイメージがありますよね。
実は、遊具などのある公園や芝生を敷いている庭、河川敷(かせんじき)などでも、雑草などがあれば生息しています。
キャンプ場や登山などのときは、マダニに刺される危険もあるので対策する人も多いでしょう。
しかし、公園で遊んでいてボールが茂みに入って取りに行くと、マダニに刺されるといったこともあります。
また、犬の散歩などで河川敷を歩いていて、犬にマダニがつき、家まで持ち帰ってしまう事例なども報告されています。
公園や庭にも生息しているかもしれないなんて…。
子供たちを安全に遊ばせれないわ。
これからマダニ対策をしっかり説明するから、それを実践すれば子供たちをマダニから守れるよ。
マダニから身を守る方法
マダニに刺されない方法と刺された時の対応を教えます。
マダニにから身を守る方法はコレ【ポイント3つ】
- 肌をできるだけ出さないようにする
- 虫よけスプレーを使用する
- 家の中に持ち込まないようにする
肌をできるだけ出さないようにする
マダニに刺されないようにするためには、まずは肌をできるだけ出さないことが大切です。
肌が出ていると、人間のにおいにマダニが引き寄せられるため、刺されてしまいます。
マダニが生息しているような場所に行くときは、必ず長そで、長ズボンを着用しましょう。
そで口やズボンのすそは、手袋、靴下の中に入れるなどして、肌が見えないようにするのがポイントです。
首元が大きく開いている服も、マダニに刺される可能性が高まります。
ハイネックの服を着用したり、首にタオルなどを巻くといいでしょう。
実は、頭皮にもマダニは寄生します。
直射日光をさけるために帽子をかぶる人も多いと思いますが、マダニ対策にも有効的です。
登山や公園でのレジャーのときには、帽子を着用することをおススメします。
子供たちと公園などで遊ぶときや、ペットを河川敷で散歩させるときなど、長そで、長ズボンが良いわね。
長そで、長ズボンだと、夏場は熱中症になりやすいから、必要に応じて水分補給やこかげでの休憩をしましょう。
虫よけスプレーを使用する
マダニは虫よけスプレーで寄せ付けないようにできます。
虫よけスプレーに配合される、ディートやイカリジンという成分が、マダニよけ効果を発揮するからです。
蚊などに刺されることを予防するために、虫よけスプレーを使っている人も多いと思います。
ディートやイカリジンの入った虫よけスプレーなら、マダニも寄せ付けないのでレジャーや畑仕事などにもオススメです。
ディートやイカリジンを含む虫よけスプレーは、効果の持続時間や使用できる年齢制限があります。
使用前に用法用量をしっかり読み、適切に使いましょう。
家の中に持ち込まないようにする
マダニを家の中に持ち込まないようにしましょう。
虫よけスプレーをしていても、衣類などにマダニが付着することがあります。
マダニが付着した衣類を家の中でぬぐと、家の中でマダニに刺される危険性がありますよ。
畑作業や野山での活動など、マダニが生息する地域に行ったときは、家に入る前にマダニの付着が考えられる服をぬぎましょう。
キャンプ道具なども、帰宅後に家の外でマダニがいないか確認したほうが良いわね。
マダニに刺されても自分でつぶしたりはがしてはいけない!
もしもマダニに刺されたら、皮膚科や外科を受診しましょう。
マダニが吸血しているときに無理やりはがしてしまうと、マダニの口が皮膚内に残ってしまうからです。
マダニの口が残ると、化膿(かのう)する場合があります。
マダニの口はクワガタの角のような形をしており、皮膚を切り裂きます。
マダニは切り裂いた部分から吸血を始めます。
吸血をしながら、口からセメント物質を出し、吸血が終わるまで口を皮膚に固定。
吸血し満腹になると、自らはがれ落ちます。
マダニは1度刺すと、7日から10日ほど吸血し続けます。
刺されても気づかない人も多いです。
また、マダニによる感染症の心配もあるため、刺されたことが分かった場合、必ず病院を受診しましょう。
受診のときに、どこで刺された場所や時間を伝えることも大切です。
マダニが媒介する感染症にご注意を!
- 日本紅斑熱
- 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
- ライム病
- 回帰熱
- Q熱
- ダニ媒介性脳炎
- クリミアコンゴ出血熱
- ツツガムシ病
マダニはさまざまな感染症を媒介すると言われています。
この中でも、特に日本で問題視されている日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、ライム病についてくわしく紹介します。
ここで紹介したマダニによる感染症はほんの一部です。
また、すべてのマダニが、感染症のウイルスや細菌などを保有するわけではありませんよ。
どのマダニが病原体を保有しているかわからないので、刺された時は体調の変化に気をつけましょう。
日本紅斑熱
- 39.0度以上の発熱、悪寒、頭痛
- 小豆くらいの大きさの発疹
- マダニに刺された部分の腫れ
日本紅斑熱は、リケッチア・ジャポニカという病原体をマダニが媒介する病気です。
日本紅斑熱に感染すると、全身に症状がでます。
感染すると39度以上の高熱や悪寒、頭痛などの症状があらわれます。
発熱後3~4日経つと、小豆くらいの大きさの発疹ができ、マダニに刺された部分が赤く腫れあがります。
また、重症化した場合、血液を固める血小板の減少がおこったり、多臓器不全などをひきおこす場合があるので注意しましょう。
毎年200件近い感染の報告例があり、死亡例もあります。
主に報告されている地域は、中四国地方や九州南部地方です。
媒介するマダニ…キチマダニ、フタトゲチマダニ、ヤマトマダニなど
治療には化学療法が行われるよ。
早期発見・早期治療がカギになる感染症です。
ワクチンは作られていないので、マダニに刺されないことが1番の予防法だよ。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
- 発熱・頭痛・意識障害・失語
- 吐き気・嘔吐・腹痛・下痢などの消化器症状
- 皮下出血
- リンパ節の腫れ
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は2009年に初めて中国で発見された、マダニが媒介する病気です。
日本では2013年に、初の感染者が確認されました。
ダニに刺され、感染すると6日から2週間の間に、発熱や消化器症状、意識障害などの症状がでます。
現在、ワクチンや効果的な治療薬はなく、対処療法のみです。
マダニに刺されるだけでなく、感染者の血液などに触れることで、感染することが報告されています。
致死率は6~30%と言われていますが、症例数が少ないため、明確ではありません。
媒介するマダニ…フタトゲチマダニ、オウシマダニ、タカサゴキララマダニなど
日本では、マダニに刺された飼い犬から人に感染した症例があります。
ペットから感染する世界で初めての報告例でした。
ライム病
〈感染初期〉数日~数週間
- 刺された部分の赤い腫れ
- 筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒
〈播種期(はしゅき)〉数日~1か月
- 皮膚症状、神経症状
- 心疾患、関節炎、筋肉炎
- 不整脈
〈慢性期〉数か月~数年
- 慢性関節炎、慢性脳脊髄炎、角膜炎
ライム病は、細菌であるボレリアの感染によって発症する病気です。
マダニによって媒介する病気で、人だけでなく動物も感染します。
野生の動物は感染しても、ほとんどの場合発症しません。
しかし、人、犬、馬、牛などは感染すると、筋肉痛や関節痛などの症状を示します。
最初は風邪やインフルエンザのような症状が主です。
全身に細菌がまわると、髄膜炎(ずいまくえん)や顔面神経麻痺(がんめんしんけいまひ)などの神経症状、関節炎、不整脈などの症状があらわれます。
その後、慢性関節炎や慢性脳脊髄炎(まんせいのうせきずいえん)などの重い慢性症状がでます。
治療方法は抗生剤の投与が一般的です。
ライム病のワクチンは、まだありません。
ライム病は、全国どこでも発症例がありますが、多く報告されているのは本州の中部より北で、特に北海道が多いです。
媒介するマダニ…ヤマトマダニ、シュルツェマダニなど
ボレリアが人の身体に入るには、マダニが刺して48時間以上吸血する必要があるよ。
刺されてから早くマダニを取り除ければ、感染しない可能性もあります。
まとめ
私たちの身近な場所にも存在しているマダニ。
感染症の病原体を持っていないマダニも、たくさんいます。
しかし、どのマダニが病原体を持っているか、私たちには見分けられません。
感染症にかからないためには、マダニに刺されないことが重要です。
キャンプや登山、公園で遊ぶときは、マダニ対策をしっかりしましょう。
もしも刺されてしまったときは、自分で判断せずに、医療機関に行きましょうね。
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