ヒゼンダニってどんなダニ?
感染症の疥癬(かいせん)って、どんな症状なんだろう・・・。
疥癬の予防法ってあるのかな?
こういった疑問についてお答えします。
ヒゼンダニは、人や動物の皮膚に寄生するダニです。
寄生すると皮膚の角質層にもぐり込んで、「疥癬(かいせん)」という感染症を引き起こします。
感染症を引き起こすと、激しいかゆみなどが全身にともない、家族やペットにまで感染が広がることも。
しかし疥癬は、適切な対処をすることで感染を予防することができます。
この記事では、まずヒゼンダニの生態についてご紹介し、さらに感染症の症状や感染経路など「疥癬」について詳しく解説していきます。
感染してしまった場合の家族内感染の予防法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
ヒゼンダニの生態
ヒゼンダニは無気門亜目(むきもんあもく)のダニ類で、ヒゼンダニ科に属するダニです。
屋外に生息しているダニですが、人やペットに寄生したり風にのったりして屋内に入り込むこともあります。
下の表は、家の中に最も発生する「ヒョウヒダニ」と「ヒゼンダニ」の違いを分かりやすくした表です。
ヒゼンダニ | ヒョウヒダニ | |
大きさ | 0.2~0.4mmほど | 0.2~0.4mmほど |
ライフサイクル | 卵から成虫になるまで:2~3週間 成虫寿命:約1カ月 | 成虫寿命:約2~3カ月 | 卵から成虫になるまで:約1カ月
寄生場所 | 動物や人間の皮膚表面の角質層内・毛穴など | 布団やソファなど、繊維の多い場所 |
好む環境 | 人の体温 | 高い湿度・20~30℃の温度 | 高い湿度・
被害 | 感染症を引き起こす | アレルギーを発症させる |
ヒョウヒダニと大きさは同じですが、ヒゼンダニの方がライフサイクルが短いのがわかります。
さらに大きく違う点は、「寄生場所」「好む環境」「被害」です。
まずヒゼンダニはどんなダニなのか、ヒゼンダニの生態についてご紹介します。
ヒゼンダニがどんなダニなのか生態を知っておくことで、感染症の予防につながります!
大きさ
大きさ:体長0.2~0.4mmほど
ヒゼンダニの大きさは、オスが約0.2mm、メスが約0.4mmと非常に小さいため肉眼で確認することはほぼできません。
小さい体で人や動物に寄生するので、感染の症状が出るまで気づかない人がほとんど。
また皮膚内に掘った穴や毛穴などに隠れていることが多く、寄生したヒゼンダニを特定することも難しいです。
寄生場所
寄生場所:人や動物の皮膚表面の角質層内
ヒゼンダニの寄生場所は、人や動物の皮膚表面の角質層内です。
皮膚表面から角質層まで穴を掘り、皮膚内にもぐり込みます。
とくに手や指の間、腰部への寄生が多く、耳の縁やひじなどにも寄生。
乳児の場合は皮膚が薄いため、全身に寄生する可能性もあります。
皮膚内にダニ・・・想像しただけでぞっとします。
好む環境
好む環境:高い湿度・人の体温
ヒゼンダニは高い湿度を好み、人の体温で活発になります。
体温より高い温度、また低い温度では動きが鈍くなるため、人の体温がベスト。
人の皮膚から離れると死滅するため、人に寄生していないと生存できません。
また、ヒゼンダニは熱と乾燥に弱いため、50℃以上の温度では10分ほどで死滅します。
ライフサイクル
卵から成虫にまるまで:2~3週間
成虫寿命:4~5週間
ヒゼンダニは、卵から成虫になるまで2~3週間。
成虫の寿命は4~5週間と、ヒゼンダニのライフサイクルは短いです。
メスの成虫は寿命が尽きるまで、1日に2~4個ほど産卵しながら皮膚内を移動しつづけます。
被害
被害:感染症を引き起こす
ヒゼンダニは、人や動物に寄生して「疥癬(かいせん)」という感染症を引き起こします。
人に寄生しますが、ヒゼンダニは吸血することはありません。
疥癬って、どんな症状が出るの・・・?
次に、疥癬の症状や感染経路など、疥癬について徹底解説していきます。
「疥癬(かいせん)」の危険性4つ
- 疥癬の「症状」はつらい
- 感染が拡大しやすい「感染経路」
- 症状が広がる「疥癬トンネル」
- 「疥癬になりやすい人」は重症化しやすい
疥癬は人から人へ感染し、夜も眠れないほど強いかゆみがともなう皮膚疾患です。
また疥癬が重症化すると、全身に広がったり隔離が必要になったりする場合もあり、とても危険です。
なぜ疥癬は危険なのか、4つの理由に分けて解説します。
①疥癬の「症状」はつらい
疥癬の症状には、「通常疥癬」と「角化型疥癬(かくかがたかいせん)」の2つあります。
通常疥癬と角化型疥癬の大きな違いは、寄生するヒゼンダニの数です。
通常疥癬 | 角化型疥癬 | |
ヒゼンダニの寄生数 | 数十匹程度 | 100万~200万 |
症状 | ・赤い丘疹、かさぶた ・疥癬トンネル | ・激しいかゆみ(厚い垢が増えたような状態) | ・角質増殖
発症部位 | 頭と顔を除く全身 | 全身 |
潜伏期間 | 1~2か月 | 4~5日 |
感染力 | 弱い | 強い |
通常疥癬
ヒゼンダニの寄生数が少ない通常疥癬は、激しいかゆみや赤い丘疹(きゅうしん)の発症が特徴です。
症状が出るまでの潜伏期間は、感染してから1~2か月ほど。
発症部位は、頭や顔を除いた全身に広がりやすいです。
通常疥癬は、寄生するヒゼンダニの数も数十匹程度なので、重症化するリスクはありません。
しかし、人の体温が上がりやすい夜間にかゆみが増すため、夜も眠れないほどの強いかゆみがともなう場合もあります。
疥癬が治癒したあとも、数カ月かゆみが残る可能性も高いです。
角化型疥癬(かくかがたかいせん)
角化型疥癬は、疥癬の重症型です。
ヒゼンダニの寄生数が100万~200万と非常に多い角化型疥癬は、角質が増殖し厚い垢が増えたような状態になります。
症状は全身に発症しますが、通常疥癬のような激しいかゆみを感じる人が少ないのが特徴。
しかし感染力が強いので、角化型疥癬になると隔離が必要になる場合もあります。
また、寄生するヒゼンダニの数が多いため、感染してから4~5日ほどと早くに発症する可能性も高いです。
②感染が拡大しやすい「感染経路」
感染経路は、人と人の接触がほとんどです。
通常疥癬の場合は長時間の接触で感染し、短時間の接触であれば感染する心配はありません。
角化型疥癬の場合は短時間の接触で感染し、寝具や衣類など間接的な接触でも感染します。
さらに、角化型疥癬は角質層に潜り込んでいるダニがたくさんいるため、剥がれ落ちた角質から感染することも。
ヒゼンダニは人から人へ移動することによって感染するため、集団生活する場では次々と感染が拡大する可能性が高くなります。
③症状が広がる「疥癬トンネル」
疥癬の特徴的な症状である「疥癬トンネル」は、ミミズ腫れのような皮疹が現れます。
疥癬トンネルは、メスの成虫が角質層内を掘り進んでできる道筋です。
メスの成虫はオスと交尾を終えたあと、角質層を掘り進めながらトンネル内に産卵します。
1日に産卵する数は、2~4個ほど。
メスは寿命がつきるまでトンネル内で産卵しつづけるため、ヒゼンダニは角質層内で繁殖しています。
また、疥癬の症状である激しいかゆみの原因は、トンネル内や角質層に残ったヒゼンダニの抜け殻やフンなどに対するアレルギー反応です。
そのため、激しいかゆみが全身に広がっている場合は、疥癬トンネルや丘疹が体のあらゆる箇所で発見されます。
④「疥癬になりやすい人」は重症化しやすい
疥癬は、誰にでも感染します。
しかし、免疫力が低下している人の場合は、重症化した角化型疥癬になりやすいです。
とくに高齢者の人は重症化しやすく、高齢者施設などでの集団感染も多く報告されています。
また、通常疥癬に感染した人がステロイド剤を内服・外用した場合、角化型疥癬になることも。
免疫力が低下した人やステロイド剤を使用した人がなぜ重症化しやすいのか、詳しいことはわかっていません。
疥癬の治療法
体に強いかゆみが発症し、疥癬トンネルや丘疹を発見した場合は、まずは必ず皮膚科の受診が必要です。
疥癬と診断されたら、治療がスタート。
疥癬の治療には、ヒゼンダニを殺すことを目的とした塗り薬・飲み薬が処方されます。
塗り薬は、症状がない箇所も含めた全身にまんべんなく塗ることが重要です。
疥癬が完治するまでの期間は、1カ月程度。
疥癬は潜伏期間が長く再発の可能性もあるため、完治したあとも3カ月程度は経過を観察しましょう。
治療開始後、ヒゼンダニが死滅したあとの死骸のよるアレルギー反応や、飲み薬の副作用で一時的にかゆみが強くなることがあります。
かゆみが強くなるのは一時的なので、薬の投与をやめずに続けることが大切です。
家族内感染の予防法
皮膚科を受診して疥癬と診断されたら、適切な対処をして家族やまわりの人への感染を予防しましょう。
通常疥癬・角化型疥癬・集団感染に分けて、家族内での感染を予防する方法をご紹介します。
治療が始まってから終わるまで、予防法を徹底しましょう!
通常疥癬
通常疥癬の場合、できる予防法は4つあります。
- 手洗いをする
- 布団を並べて寝ない
- 長時間の接触は避ける
- 寝具や衣類など、間接的な接触も避ける
感染した人だけでなく、まわりの家族の人も定期的に手洗いしましょう。
布団を並べたり、同じ布団で寝たりするのも避けてください。
また肌や手などが直接触れる長時間の接触や、肌に直接触れるタオルなどの共有も避けると感染を予防できます。
角化型疥癬
角化型疥癬の予防法は、徹底的な対処が必要になります。
感染を防ぐ方法は、以下の8つです。
- 個室で過ごす
- 手洗いをする
- 接触する際は、手袋・スリッパ・予防衣を着用する
- 寝具類や衣類は毎日変える
- 洗濯ものは、50℃以上のお湯に10分以上つけてから洗濯する
- 入浴は毎日する
- 入浴後の浴室は、50℃以上のお湯で全体を流してから洗う
- 毎日丁寧に掃除機をかける
感染した人は、なるべく個室で過ごしましょう。
感染した家族と接触する場合は、手袋やスリッパ、予防衣を必ず着用してください。
寝具類や衣類は毎日変えて、洗濯する際は50℃以上のお湯につけてから洗濯すると、洗濯ものについたヒゼンダニは死滅します。
また毎日入浴し、体についたヒゼンダニを洗い落とすのも効果的。
入浴後の浴室は、剥がれ落ちたヒゼンダニや角質が残っているため、50℃以上のお湯で全体を流してから洗ってください。
感染した人が過ごしている部屋は、床や布団などに毎日掃除機をかけて、剥がれ落ちた角質などを除去することが大切です。
さらに掃除機をかける前に、コロコロやクイックルワイパーで角質やゴミを取り除いておくと、より予防効果が高まります。
集団感染
集団感染の場合、基本的な予防法は角化型疥癬と同じです。
しかし集団感染が起きた場合は、再発を繰り返すことが多いといわれています。
集団感染した場合の予防法として、適切な対処は2つあります。
- 感染源を特定して隔離する
- 一斉治療を行う
まずは角化型疥癬の感染源となる、感染者を特定します。
集団感染がなかなか収まらない原因は、まだ症状が出ていない感染者を放置しているからです。
そのため、必ず感染源となる感染者を特定して隔離することが必要になります。
また症状がでていない人でも、感染者と接触し感染が疑われる場合には、一斉に予防的治療を行う必要も。
一斉に治療を開始したあとは、定期的に検査を行い角質層にヒゼンダニが確認されなくなると、集団感染の終息となります。
まとめ|ヒゼンダニの感染症は予防できる!
- ヒゼンダニは、人や動物に寄生するダニ
- 寄生されると「疥癬」という感染症を引き起こす
- 「通常疥癬」の場合は、激しいかゆみや丘疹、疥癬トンネルの症状が発症
- 重症化した場合は、角質が剥がれ落ちるなどの「角化型疥癬」になる
- 角化型疥癬になった場合は、隔離などの徹底した対処が必要
- 疥癬は、適切な対処で予防できる
疥癬は激しいかゆみや角質が剥がれ落ちるなど、とてもつらい症状が発症する皮膚疾患です。
また、家族の中で1人でも疥癬に感染すると、家族全員が感染する可能性も高くなります。
そのため、まわりの人への感染を予防する適切な対処が必要です。
もし自分や家族の人が感染してしまった場合は、今回ご紹介した予防法を行いましょう。
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