ダニ殺虫剤の成分「ピレスロイド」って何?
人や動物にも害はあるんじゃないの?
ピレスロイド系ダニ殺虫剤を知りたい
こういった悩みにお答えします。
「ピレスロイド」という言葉を聞いたことありませんか?
ピレスロイドとは、ダニや害虫の殺虫剤に含まれる天然成分「ピレトリン」をはじめとした、さまざまな殺虫成分の総称です。
殺虫成分の種類は数多くあり、即効性が高いものや残効性に優れているものなどがあります。
それらの特性を持つ成分をまとめて「ピレスロイド系」と呼びます。
ピレスロイドって名前は聞いたことあるけど、実際はよく知らないという人も多いでしょう。
この記事では、ダニ対策の強い味方・ピレスロイドについて詳しく説明します。
また、ピレスロイドの安全性やピレスロイド系製品もご紹介しますので、ぜひご覧ください。
殺虫剤はダニへの殺傷能力が高くて良いけど、人への安全性が心配なのよね…
ダニ殺虫成分「ピレスロイド」について
- ダニ殺虫成分・ピレスロイドとは
- ダニに効くピレスロイドの成分や効能
- ダニへのピレスロイドの効果
ピレスロイドは、ダニを駆除するのに欠かせない殺虫成分です。
まずはピレスロイドの成分や特性、さらにダニへの効果を説明します。
ダニ殺虫成分・ピレスロイドとは
ピレスロイドとは、除虫菊に含まれる天然殺虫成分「ピレトリン」と、ピレトリンに類似した合成化合物(合成ピレスロイド)の総称です。
除虫菊(和名・シロバナムシヨケギク)は、キク科の多年草で「ピレトリン」という殺虫成分を含んでいます。
この除虫菊を元に、ダニや害虫に効くさまざまな殺虫成分の合成ピレスロイドが開発されました。
ピレスロイドは、天然ピレスロイドと合成ピレスロイドの大きく2種類があります。
天然ピレスロイドは、光や酸化に対して不安定であるため、効きめが短いことが欠点です。
そのため、即効性や残効性、人への安全性を研究・開発した結果、多くの合成ピレスロイドが生まれました。
家庭用のダニ殺虫剤は、主に合成ピレスロイドが使われています。
除虫菊を使った日本初の殺虫剤が、実は「蚊取り線香」なんです。
蚊取り線香は、あのKINCHO(大日本除虫菊株式会社)の創業者が開発したんだって。
ダニに効くピレスロイドの成分や特性
ピレスロイドには、速効性、忌避効果、追い出し効果(フラッシングアウト)などがあり、それらの効果でダニや害虫を退治します。
また、ピレスロイドは人への安全性が高いことが特長で、家庭用殺虫剤には欠かせない成分なのです。
では、どんな成分や特性がダニに効果あるのか、説明していきます。
ピレスロイド系殺虫成分 | 成分の特性 | 製品例 |
---|---|---|
フェノトリン(合成ピレスロイド) | とくに残効性、速効性がある。 殺虫剤にはフェノトリンを使用しているものが多い。 ピレスロイド系の中では、とくに安全性に優れている。 また、疥癬(かいせん)の治療薬(薬名:スミスリン)としても使用される。 ※疥癬はヒゼンダニによる皮膚感染症で、強い痒みや皮疹(ひしん)が出る。 | 「ダニアース」 その他、多くの殺虫剤。 |
ピレトリン(天然ピレスロイド) | 速効性に優れている。 効きめが比較的短い。 蚊取り線香の他、食品工場や園芸などの殺虫剤としても使用される。 | 「ムシューダ」 「ダニよけ スプレータイプ」など。 |
アレスリン(合成ピレスロイド) | ハエ、蚊に対して特効を示し、きわめて速効性に優れている。 蚊取り線香やペット用殺虫剤に使用される。 | 「金鳥ノ渦巻」 「ノミ・ダニ取りスプレー猫用」など。 |
フタルスリン レスメトリン (合成ピレスロイド) | フタルスリン:とくに速効性があり、ノックダウン効果が高い。 レスメトリン:とくに致死効果が高い。 ※この2種は同時配合されることが多い。 | 「キンチョール」 「フマキラーA」など。 |
ダニ対策として、特に注目すべき成分は「フェノトリン」。
フェノトリンは、たいていの家庭用ダニ殺虫剤に含まれている成分で、人への安全性が高いことがポイントです。
上記で紹介したのは、ダニ殺虫剤に使われるピレスロイド系殺虫成分のごく一部。
その他のピレスロイド系殺虫成分について知りたい人は、KINCHO公式サイトでご確認ください。
ピレスロイド系殺虫成分って本当にたくさんあるの!
長年の研究・開発の賜物(たまもの)ですね。
ダニへのピレスロイドの効果
ピレスロイドは、ダニや害虫に神経毒をもたらす効果があります。
ダニや害虫の体内にピレスロイドが吸収されると、中枢神経(ちゅうすうしんけい)や末梢神経(まっしょうしんけい)などの神経伝達を阻害する作用を起こします。
この神経毒作用によって、ダニや害虫は異常興奮を起こし、神経がマヒして死にいたるのです。
ちなみに、ピレスロイドが神経毒となるのは、主に昆虫類、爬虫類(はちゅうるい)、魚類、両生類などが当てはまります。
人をはじめとする哺乳類(ほにゅうるい)や鳥類には無害とされており、その安全性においてもピレスロイドがダニ駆除に優れている点でもあるのです。
では、なぜピレスロイドはダニや害虫には効くのに、人には無害なのか。その理由を次にご説明します。
神経毒って言われると、ちょっと心配になっちゃう!
安心してください。人体への影響は低いとされています。
その理由は次を読めば分かります。
人や動物への影響は?ピレスロイドの「選択毒性」について
- 人をはじめ、哺乳類や鳥類には【無害】
- 昆虫類、爬虫類、魚類、両生類には【有害】
ピレスロイドには、特定の生物にだけ毒性作用する選択毒性という性質があります。
どんな生物に有害で、どんな生物には無害なのでしょう。
次は、ピレスロイドの選択毒性について説明します。
人をはじめ哺乳類や鳥類には【無害】
人をはじめ、哺乳類や鳥類には、ピレスロイドは無害です。
ダニや害虫がピレスロイドを体内に取り込むと、神経毒となり死んでしまいます。
これに対し、哺乳類や鳥類はピレスロイドを体内で分解・代謝し、尿などで体外へ排出することができるのです。
ピレスロイド系殺虫成分の中でも、とくにフェノトリンは人への影響が低いことから、殺虫剤によく使われている理由でもあります。
殺虫剤に苦手意識がある人も、ピレスロイドに対して少しイメージが変わったのではないでしょうか。
昨今のダニ殺虫剤は安全性に優れているので、安心してダニ対策ができますね。
解毒できるなんて知らなかった!殺虫剤のイメージ変わったかも。
人には無害でも、薬品アレルギーの人や喘息などの基礎疾患がある人は、医療機関に相談してから使いましょう。
昆虫類、爬虫類、魚類、両生類には【有害】
昆虫類、は虫類、魚類、両生類には、ピレスロイドは有害です。
ダニやゴキブリなどの害虫に効くということは、それらの生物に近い昆虫や爬虫類にもピレスロイドは効果があります。
また、魚は水中にいますが、ピレスロイドは魚毒性(※)が示されるので有害となるのです。
(※)魚毒性とは、水に溶けた化学物質が魚類に及ぼす毒性のことをいいます。
そのため、ご家庭に昆虫や爬虫類、観賞魚などを飼育している人は、殺虫剤の取り扱いに注意してください。
ダニ駆除に殺虫剤を使用するときは、虫かごや水槽などをいったん外や別室に移動させてから使いましょう。
製品の注意書きをよく読んで使用してくださいね。
注意事項を守れば、ピレスロイドは優秀なダニ殺虫剤。
怖がらずに使ってね。
【タイプ別】ダニに効くピレスロイド系製品
タイプ | 【メーカー名】製品名 |
---|---|
1.スプレータイプ | 【KINCHO(大日本除虫菊株式会社)】ダニがいなくなるスプレー 【フマキラー】ダニフマキラー 【アース製薬】ダニアーススプレー ハーブの香り 【アース製薬】ダニアース |
2.くん煙・霧タイプ | 【バルサン】バルサンマダニプラス 【バルサン】バルサンマダニプラス霧 【アース製薬】ダニアースレッド 【アース製薬】ダニアースレッド ノンスモーク霧タイプ 【フマキラー】ゴキ・ダニまとめてジェット |
3.シートタイプ | 【住化エンビロサイエンス株式会社】防ダニシートS「SES」 【株式会社ワイズ】住まいの防虫物語 防ダニ・抗菌シート |
ピレスロイドの成分や特性、選択毒性について説明してきました。
ピレスロイドについて理解が深まったら、今度はピレスロイド系のダニ殺虫剤をタイプ別にご紹介します。
ここでは、一般的に知られている製薬会社の製品を主に取り上げてみました。
また、数ある殺虫剤の中でも、「ダニ」に焦点を当てた製品をラインナップしています。
【その1】ダニに効くピレスロイド系製品:スプレータイプ
まずは、スプレータイプをご紹介します。
スプレータイプは、準備や後片付けがなくお手軽にできるダニ殺虫剤です。
ピレスロイド系殺虫剤を開発・販売しているメーカーは、主にKINCHOやアース製薬、フマキラーなど、大手殺虫剤メーカーがあげられます。
スプレータイプは準備も手間もなし!デイリー使いにおすすめ。
【KINCHO(大日本除虫菊株式会社)】ダニがいなくなるスプレー
ピレスロイド(フェノトリン):100mlあたり約0.7g配合。
駆除効果:約1カ月。
「月に一度のかんたんダニ退治」というキャッチコピーの通り、駆除効果が約1カ月持続するデータがあります。
また、ミスト噴射のエアゾールタイプ(無臭性)も製品化され、さらにダニ対策を強化しています。
参考:KINCHO(大日本除虫菊株式会社)
【フマキラー】ダニフマキラー
ピレスロイド(フェノトリン):100mlあたり約0.67g配合。
増殖抑制効果:約2カ月。
ダニフマキラーは、新型トリガーを採用したことで、より広範囲にスプレーが噴射できるよう改良されました。
スプレー回数が減り、ダニ予防もラクになりますね。
持続効果が2カ月というのもポイントです。
参考:フマキラー
【アース製薬】ダニアーススプレー ハーブの香り
ピレスロイド(フェノトリン):100mlあたり約0.66g配合。
増殖抑制効果:約1カ月。
ハーブの香りの他、ソープの香りも選べて、薬品の嫌な匂いも残りません。
また、天然由来成分のダニよけスプレーも販売しており、薬品アレルギーの人にも安心してダニ対策ができます。
参考:アース製薬
【アース製薬】ダニアース
ピレスロイド(フェノトリン):100mlあたり約0.25g配合。
畳のダニ駆除といえば、ダニアース。
2WAYノズルで畳の表面と内部の駆除ができることで知られています。
今現在、畳の内部にスプレーできる商品はこのダニアースだけなんです。
もちろんカーペットや絨毯にも使えるので、一家に一つあると便利ですね。
参考:アース製薬
【その2】ダニに効くピレスロイド系製品:くん煙・霧タイプ
次は、家の隅々までダニ駆除ができるくん煙・霧タイプをご紹介します。
くん煙・霧タイプは、ピレスロイド系成分だけでなく、オキサジアゾール系成分(メトキサジアゾン)も同時に配合されていることが多いです。
成分濃度も高くなるので、スプレータイプより強力といえるでしょう。
くん煙・霧タイプは準備や片付けがありますが、ピレスロイド系以外の殺虫成分も含まれているので効果が高いです。
【バルサン】バルサンマダニプラス
ピレスロイド(フェノトリン):5%/1缶40g
オキサジアゾール(メトキサジアゾン):4%/1缶40g
くん煙・霧タイプのダニ殺虫剤といえば、バルサンが思い浮かぶ人も多いでしょう。
こちらは、屋外にいるマダニにも適用した殺虫剤です。
外遊びや散歩の多いお子さんや犬などがいるご家庭におすすめですよ。
参考:バルサン
【バルサン】バルサンマダニプラス霧
ピレスロイド(フェノトリン):0.5g/1缶46.5g
オキサジアゾール(メトキサジアゾン):1.25g/1缶46.5g
バルサンマダニプラスの霧タイプです。
こちらは煙タイプとちがって、煙が出ないので火災報知器に反応しません。準備が簡単です。
参考:バルサン
【アース製薬】ダニアースレッド
ピレスロイド(フェノトリン):10.9%/1缶10g
オキサジアゾール(メトキサジアゾン):1.7%/1缶10g
トリフルオロメタンスルホンアミド(アミドフルメト):4.2%/1缶10g
アース製薬のくん煙剤といえば、ダニアースレッドですね。
トリフルオロメタンスルホンアミド系も含まれ、3つの有効成分でダニや害虫に高い駆除効果を発揮します。
参考:アース製薬
【アース製薬】ダニアースレッド ノンスモーク霧タイプ
ピレスロイド(フェノトリン):0.83g/1缶66.7ml
オキサジアゾール(メトキサジアゾン):0.13g/1缶66.7ml
トリフルオロメタンスルホンアミド(アミドフルメト):0.32g/1缶66.7ml
ダニアースレッドの霧タイプです。
煙が出ないので火災報知器に反応しません。
アース製薬のくん煙・霧タイプは他にもたくさんあるので、ダニ以外の害虫を駆除したい時にもおすすめです。
参考:アース製薬
【フマキラー】ゴキ・ダニまとめてジェット
ピレスロイド(d・d-T-シフェノトリン):0.25g/1缶100ml
オキサジアゾール(メトキサジアゾン):1g/1缶100ml
噴射口が2つあるダブルジェット噴射とガスリッチ処方で部屋のすみずみまで薬剤が届きます。
こちらの製品は火災報知器カバーなどが付いていませんので、ポリ袋で覆うなどの事前準備が必要です。
参考:フマキラー
【その3】ダニに効くピレスロイド系製品:シートタイプ
最後は、シートタイプのピレスロイド製品をご紹介します。
基本的に防ダニシートは、誘引剤と粘着剤で捕獲するものが多いですよね。
しかし、こちらの製品は、ピレスロイド成分を配合している数少ない防ダニシートなのです。
シートタイプは、カーペットやじゅうたんはもちろん、タタミの下にも敷けるので徹底的に防ダニができます。
シートタイプのピレスロイド製品は珍しい!
スプレータイプやくん煙・霧タイプより持続効果が長いこともポイントです。
【住化エンビロサイエンス株式会社】防ダニシートS「SES」
ピレスロイド(フェノトリン):0.25g/㎡
持続効果:6ヶ月間有効
1枚のサイズは90×90cmです。
1袋に4枚入りなのでタタミ2畳分を敷くことができます。
こちらはダニ以外にも、シミ虫の対策もできる優れものです。
【株式会社ワイズ】住まいの防虫物語 防ダニ・抗菌シート
ピレスロイド含有量:不明
持続効果:約1年
1畳用・2畳用・3畳用があります。
シートはカットして使えるので、好きなサイズで好きな場所に敷くことができます。
下駄箱や衣類タンス、シンク下など、ダニが発生しそうな場所に敷いておけるのは便利ですね。
殺虫剤が効かないなと感じる人は、以下の記事も参考にしてみてください。
実は、こんな理由もあるんです。
まとめ|ピレスロイドは安全性のあるダニ殺虫剤!
以上、ダニ殺虫剤の成分「ピレスロイド」について説明しました。
ピレスロイドがどういうものか、また、さまざまな成分や特性があることも分かりましたね。
また、ピレスロイドが安全な理由も分かり、殺虫剤への認識も変わったのではないでしょうか。
ピレスロイド系製品をたくさん紹介しましたので、ダニ対策の参考にしてください。
最後に、ピレスロイドについて以下に簡単にまとめました。
- ピレスロイドとは、天然殺虫成分「ピレトリン」やその他の合成化合物の総称のこと。
- ダニ殺虫剤によく使われるピレスロイド系成分は「フェノトリン」。安全性が高い。
- ピレスロイドは選択毒性があり、ダニや害虫には神経毒である。
- 【無害】人をはじめとする哺乳類や鳥類・・・殺虫成分を分解・代謝し、排出できる。
- 【有害】昆虫類、爬虫類、魚類、両生類・・・殺虫成分を解毒できない。
ピレスロイドを正しく理解して、万全なダニ対策をしましょう。
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